第一子あるあるストーリー|Vol.02【私が先に頑張ってきたのに】
\第一子あるあるストーリー|Vol.02/
【私が先に頑張ってきたのに】
長年勤めた職場。
私が入った頃は、まだ創業期だった。
会社が始まったばかりで、マニュアルもない。
詳しく教えてくれる人もいない。
試行錯誤しながら、手探りでここまで進んできた。
十数年経って、ようやく会社の形ができてきた。
あの頃、一緒に悪戦苦闘した仲間とは、
今でも時々飲みに行っては、
「あの頃は大変だったよね」なんて笑いながら話す。
会社はどんどん成長していった。
私も少しずつ立場が上がり、役職がついた。
「あの頃の苦労を乗り越えてきて、本当によかった」
そう思っていた。
後から入ってきた社員を指導した。
お客様対応もした。
集客もした。
時間を忘れるほど働いた。
本当に、頑張ってきた。
そんなある日。
私が天塩にかけて育ててきた後輩に、役職がついた。
しかも、私より上の役職。
給料も、私よりいいらしい。
その瞬間、
今まで感じたことのない感情が、身体の中をぐるぐると渦巻いた。
会社で顔を合わせるたび、まともな表情でいられない。
そんな自分が嫌だった。
恥ずかしかった。
そして、心の中では、
「創業期から頑張ってきたのは私なのに」
「なんで社長は、私じゃなくて後輩を選ぶの?」
そう思っていた。
でも、誰にも相談できなかった。
「そんなこと思ってるの?」そう言われるのが怖かった。
私は、嫉妬している。
そう思うと、ますます自分が嫌になった。
上の立場になればなるほど、
自分の本音は言えなくなっていった。
そして、ある日。
体調を崩した。
私にとっては珍しいことだった。
3日間、熱が出て休んだ。
こんな休み方をしたことなんて、今までほとんどなかった。
休んでいる間、今まで張りつめていた糸が、
プツンと切れたような感覚があった。
そして自然と、
「もう、会社やめよう」という思いが湧いてきた。
でも、すぐに頭の中で声がする。
「これは逃げじゃない?」
「こんな状態で辞めていいの?」
「これって嫉妬だよね?」
「ここを超えなくていいの?」
でも、本当の気持ちは、
「もう疲れた……」だった。
私は、創業期から本当によくやってきた。
会社にも、ようやく土台ができた。
もしかしたら、私の役割は、
とっくに終わっていたのかもしれない。
それでも私は、辞めるのが怖かった。
必要とされたかった。
「私がいないと…」
そう思って、ここにとどまっていたのかもしれない。
振り返ってみると、
私の人生には同じようなことが何度かあった。
中学生の頃。
仲の良かった友達が、他の子とも仲良くするようになった。
人気が出て、先生からも評価されるようになった。
そのとき私は、そっと身を引いた。
大学の頃もそうだった。
サークルを立ち上げたのは私。
中心にいたのも私。
後から入ってきた人を育てて、
その人がリーダーの役割をできるようになった頃
私は、自分のほうが劣っているような気がして、
嘘をついて辞めた。
── どうして私は、いつも同じところで苦しくなるんだろう。
私は、2つ下に弟がいる。
もしかしたら幼い頃の、
母と弟と私の関係の中で癒されていないものが、
大人になった今も、「後から来た人に、私の場所を取られる」
という形で現れているのかもしれない。
■ 第一子あるある
先に入った。
先に覚えた。
先に頑張った。
先に道を作った。
そして、後から来た人を育てた。
なのに
その人が自分より評価されたとき、
なぜか苦しくなる。
「私のほうが頑張ってきたのに」
「私が育てたのに」
「どうして私じゃないの?」
そんな気持ちが出てくる。
そして、その嫉妬を感じる自分を責めてしまう。
でも、その奥には、
「私も、ずっと選ばれたかった」
「私の頑張りを、誰かに見てほしかった」
という思いがあるのかもしれない。
そして、もう一つ。
「私が先に作った場所を、誰かに取られたくない」
という思い。
でも
誰かが私の後を歩けるようになったことは、
私が作ってきたものがなくなったことではない。
私が先に道を作ったから、
その人は、その道を歩くことができた。
そして、
私は「先にいた人」であることに、
しがみつかなくてもいいのかもしれない。
■ 育てた人が、自分を超えていく
第一子の力は、
「私が一番でいること」ではなく、
「自分が先に道をつくり、
後から来る人が、その道の先へ
進んでいけるようにする力」なのかもしれない。
「私より上に行った後輩が憎い」
そう思った。
悔しかった。
嫉妬した。
だって、私はずっと頑張ってきたから。
私が育てた人が、私より評価される。
私がつくってきた場所で、私より上の場所に立つ。
そりゃ、悔しい。
でも、それでいい。
悔しかった自分を、無理に隠さなくていい。
嫉妬した自分を、「未熟だった」と責めなくてもいい。
私は、あの人のために
道をつくってきたわけじゃない。
私は、自分の力で道をつくってきた。
先に進んで、試行錯誤して、
何もないところから道をつくってきた。
そして今、その道の先へ、あの人が進んでいく。
それも、私がつくってきた道のひとつの続きなんだ。
だから、もう、その人の前に立ち続けなくていい。
譲っていい。
送り出していい。
そして私は、また新しい道をつくっていけばいい。
誰かに追い越されないために頑張るのではなく、
誰かに選ばれるために頑張るのでもなく、
私は、私の行きたい場所へ行くために、
新しい道をつくっていく。
それが、
第一子として生きてきた私が、
これから使っていく力なのかもしれない。

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心理セラピスト 西谷 真美
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